平成29年 秋 代表あいさつ

平成29年 秋 あきらかに違ってきている

 臨床精神科作業療法研究会
 代表 青山  宏

あきらかに違ってきている。自分自身、たかだか60年を超えて生きているだけなのに、そう思わずにはいられない。例えば、天候がそうだ。雨の降り方や寒暖の差、風の強さなどにそう感じる。大雨被害などの際の住民インタビューでは、「こんな降り方は生まれて初めて」と語られることが多いように思う。明らかに、この2,30年の間に何かが変わってきているように思う。単純に地球温暖化のせいだとは言わないが、何か変だと感じてしまう。

 人と人の関係に関してもそう思わずにはいられない。ちょっと前の頃より、自分と違う立場の人に向けた言葉や態度に棘棘しく非寛容なものを感じるようになってきた。ヘイトスピーチに見られるように、宗教、民族、立場が違うものを全く認めようともしないだけでなく、叩きのめしたいとの意思さえ感じる。人の話は聞かない。説明や合意は振り向きもされない。数の力で物事を強引に押し通す。都合が悪いことは全てフェイクニュースとされる。一国を代表する立場の人間さえ、互いに子供っぽい罵詈雑言を浴びせてよしとしている。

 街での人の振る舞いにも、違ってきているのを感じてしまう。多くの人がうつむき、手の中の四角い箱を見つめている。情報は満ち溢れているのに、今までの時代より、互いの会話や笑顔の交換も少なくなってきているのではないか。あきらかに違ってきている。
 
 そう思ってみてみると、当研究会で続けている症例検討は、いい意味で変わらない。ゆったりした時間が流れているように思う。気のせいだろうか。そうではあるまい。定例会、公開症例検討会で、1症例に3時間をかけて、じっくりと患者さんと作業療法士の相互の関係性を見つめていく取り組みは違ってきていない。臨床の症例に学び続け、対象者と作業療法士の相互の力と可能性、作業の力を信じ続けるという確かな共通の基盤が存在しているからだと思う。今後も、ギスギスした時代と世界の流れの中で、しっかり地に足をつけて活動を続けていってほしいと念じずにはいられない。